先日、ニュースで知った日本酒の輸出を政府も後押しして進める促進するという話ですが、本日サンケイビジネスでも紹介されているのを知りました。さて今回のこのプロジェクト名は、「ENJOY JAPANESE KOKUSHU」だそうです。
関連する企業や方々の期待は高いでしょうね。具体的にまずは何から手をつけていくのか楽しみです。
まず、数字。
08年の清酒の国内消費量は63万1,000キロリット ルと98年比で4割減少した。最盛期の1975年(167万5,000キロリットル)と比較すると実に37.7%の水準まで落ち込んでいる現実があります。国内消費量に対する輸出量の割合は、依然として2%前後でしょうか。2011年の輸出額は87億7601万円。輸入されるワインは1066億8652万円。数字を見る限り、海外市場が未開拓なのは分かりますが、シビアな数字が並んでいる気がします。改善できるチャンスはありますが。
日本政府が急に変更できない、諸外国の関税や法律は?
政府が後押しするといっても、アルコール飲料の輸出の話は相手国の関税率や法律が障壁となりますよね。例えばこれから伸びそうな途上国は、まだまだ関税も高いし、法律も厳しい。そして消費するお客さんの層も狭い。(例として東南アジアの国です)
韓国の場合、15%の関税と付加価値税なども乗せると、最終的には税の%は68%になるそうです。それとは異なり、実際に先進国、例えばアメリカなどへの輸出は既に土台が確立されているなと思います。でも、これも州ごとに異なるアメリカ国内の酒税の話もあるので、いきなり日本の政府がそれを変更する事はできないですよね。アメリカ政府は基本的に自国内の企業・国民に利益がある事を第一に進めるし。
国税はどう動くのか?これも気になります。
国が発行する国債の額を見ると、税収入だけではやっていけない状態なのが簡単に分かりますよね。2011年6月の段階の発表で、943兆円という過去最高の厳しい財政状況だというのは、よくニュースでも目にします。国民一人当たりで計算しても一人700万円を超える借金といわれています。国を運営する上ので支出が膨らみ、収入でカバーしきれない。なので国債を発行し続け、その場をしのぐ。こんな状況が続いていますが、輸出を促進しても国内消費ではないので消費税を取ることが出来ません・・。となると、税務署的にはどのようなメリットがあるのか?と考えてしまいます・・。日本酒の製造ボリュームもピーク時に比べて今現在は半減。蔵の数は1200ぐらいまで減ったとよく耳にします。
「売り込みたい」だけではプッシュセールスなので、売れない。大事なのは?
誰でもドアツードアのセールスをされたら、跳ね返したくなります。プッシュされているからですね。マーケティング的に考えても、プル型にしないと、興味をそそられ、買うというアクションにはつながらない。
日本酒を世界に輸出、広めていく為には何が必要なのか?
そう考えると、僕はやはり教育なのかなと思います。税率、法律は急に変えることができないし。例えば、「多言語での日本酒コース」は、地道だけど効果があると思います。これは、プル型ですよね。興味がある人が参加し、知識をつける。その後、そのフィールドで知識を活かすように活躍する。「流れ」が出来ている気がします。
酒造メーカー、蔵元向けへのサポート体制は?
実は、海外に輸出されている日本酒を見ると、その国様にカスタマイズされている商品というのは少ない気がします。例えば台湾で見ることが出来る日本酒は、日本国内で出回っている見た目、デザインとほぼ一緒。それに、日本酒業界特有の小難しい用語が並べられてますよね・・。なんか先日韓国で「辛口」とか、そういう言葉が商標登録されたとか・・・。こういった海外の人にはよく分からない言葉を改善する必要があるのかな?と思います。
かなり必要かと思うのはデザインのサポート。作り手は、海外マーケットの末端の人々の生の声を知らない気がします。それは、僕が海外の友人たち、アメリカ、オーストラリア、フランス、台湾、香港の人達に聞けばいつも出てくる話題です。よく分からないラベルを見ると、「怖い」と言ってます。それもそうですよね。体に入れるアルコール飲料ですから、自分が何を飲もうとしているのか?が分からなければ、誰でも恐怖を覚え買うことはありません。しかも、商品棚を見て、買うか買わないかの判断をするのは、一瞬の話。この一瞬をキャッチ出来るようにするには、まずは、マーケティング戦略を立て、デザインに反映させる必要がある。そう思います。
海外のインポーターの生の声は?
僕の所で輸出プロジェクトを進めていると、海外のインポーターから必ず言われることは、デザイン面についてです。ラベルは勿論、ボトルの色、シェープ、ダンボール箱まで。
>ラベルについて:
これは、やはり表記やキャッチコピー、その酒を連想させるようなデザインです。読むより、見て直感的に分かるデザインにしてほしいと言われます。さすが、海外の方々。主張が出てくるので、助かります。それが、現場の生の声です。
>ボトルについて:
これもよく言われます。安っぽいボトルだと嫌だと・・・。それは、やはり店の棚に並べられた際の価格を考えて見ましょう。輸出コスト、税金、流通、儲けなどを足していけば、大体日本国内価格の3倍近くになっていると思います。そうすると、商品棚に並んだ時に、ワインなどの他の酒類に比べると高いですよね。ワインっていくらで買います??その金額に合う見た目でないと、選ばれない。これは当たり前。高級に見える色、安っぽく見える色。これも視覚マーケティングですね。
>ダンボール箱について:
これは、ワインの業界が箱にもこだわっているからですね。想像すれば簡単ですが、インポーターの倉庫を見に来た卸業者さんの目を引くのはどんな箱でしょうか?中身のボトルより先に、箱から見られているのです。箱が魅力的じゃなければ、話の話題にすらなりません・・。この事実をインポーターさんから教えて頂いた時は、目から鱗でした。なので、今現在進めているプロジェクトは、表ラベル、裏ラベル、ボトル、ダンボール箱にいたるまで、味以外の全てのマーケティングポイントをカスタマイズしています。
酒造メーカーは、デザインを変えるのにだってコストはかかります。つまり、このポイントを政府がバックアップするなら販促活動に直結します。助成金でも良いかもしれませんね。海外市場向けのマーケティング経費の一部を国が負担するなど。そうすれば、蔵元のマーケティング意識も向上しますし、結果的に輸出量にも反映されると思います。そういった体制を整えなければ、予算を組んでも水のように無くなる気がしますね。せっかくなので、結果が出るような予算の使い方になれば良いなと思います。
多分、現時点では海外で試飲会イベントをやりましょう!
がプロジェクトの目玉だと思います。
それ、もう既に何回もやってるし・・・。で、ちゃんと結果がついて来ているか?は疑問です。
なので、今までやってきたことを踏まえて、新しい取り組みに予算が使われて、輸出促進につながれば良いなと思ってます。くれぐれも、プロモート活動という名の海外旅行にならない事を祈ります。行くなら、現地語が出来るコアな人と一緒に行く、現地のキーパーソーンを連れてくるなどをしないと、日本側の人達ばっかり出向いていっても、あまり効果が無いのでは?と思います。
とりあえず、予算が活きる形で使われると良いですね。