京都の蔵元、玉川を造られている木下酒造さんの蔵見学

7つの蔵見学の第3弾目は京都府北部・久美浜に位置し、今年で171年の歴史を誇る蔵元、木下酒造さんを訪問させて頂きました。京都と言ってもエリア別に風景が異なるので、その違いを見れるのも楽しみの一つですよね。

 

木下さんの酒は「玉川」という名称で展開され、僕のところでは現在

  • シンガポール
  • タイ

の2カ国へ輸出させて頂いております。

 

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社長の木下さん。約3時間、みっちりと色々な話をしてくださりました。商売をやっている僕が一番興味があったのは、今の代の社長さんになって何が一番変わったか?そう、Turning pointです。今となっては玉川ブランドの酒を目にする事は多いですが、そこに至るまでの話を色々と質問し、教えていただきました。

 

ハッキリと流れが変わったのは、6年前。ハーパーさんを迎えてからだそうです。話題性があったとか、そういう話ではなく、「蔵としてのStyle」をあらためて考え、行動を起こし始めた事が始まりとの事。

 

例えば、

  • 商品開発
  • 設備への投資

この2点を強化していくには、経営者としての舵取りの仕方や、リスクが伴いますが、それらを積極的に進めていったそうです。殆どの人間は、「現状の行き方」に居るのが心地良く、新しい事を取り入れて失敗する事を恐れる場合が多いとよく言いますよね。しかし、木下社長は6年前からハーパーさんや、スタッフの皆さんと一丸となり、色々な事に挑戦して今現在があるそうです。

 

設備の話をすれば、6年前から酒を熟成させる為に貯蔵用の40フィートリーファーコンテナ(中古・新古)を導入し始めたそうです。1年に1本のペースで増えてきたコンテナは、6年目には、一度に2本の新品のコンテナを導入するまでに。今では合計7本のコンテナが並んでいます。貯蔵用のコンテナが増える様子を見ても、順調にプロダクションが上がっている様子が伺えますよね。

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酒造りについて詳しく説明してくださったのは、杜氏のフィリップ ハーパーさん。 この忙しい時期にもかかわらず、色々と教えてくれました。

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造りに関するお話も勿論勉強になるのですが、蔵の一部一部を歩きながら、「この部分は*年前に増築し、そのお陰で***が改善されて、造りの効率も上がった」等の、プロダクションの変化の様子も詳しく教えてくれました。

 

 

自然仕込・Spontaneous Fermentationについて、聞いてみる

 

蔵見学をしていると、勿論Yeastの話にもなりました。

 

「うちはね、#7、#9、#14を速醸酛に使うけど、We use Mysterious Yeast, I don’t even know the name of it….でも、それは蔵自体に住み着いている独自のYeastなんだよ」と教えてくれました。

 

Maybe the yeast exists on that wall, or the corner of the room… etc

と日本語と英語を織り交ぜながら説明してくれました。

 

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約40%の玉川商品は、「自然仕込・Spontaneous Fermentation Style」を取っているそうです。一般的には約2週間で出来る速醸酛を使う蔵が殆どだと思いますが、所要期間約1ヶ月近くかけて酒造りをする「生酛」「山廃酛」にも力を入れているのが杜氏のハーパーさん。現在では、このStyleが蔵の大事な看板になっているのは確かですよね。

 

しかし、時間と労力、そして腐造や酸敗のリスクが大きとの事。この取り組みをハーパーさんが蔵に入った初年度から、木下社長の理解ももらって作り始めたそうです。「始めから取り組むのが大事。初年度やらずに、後々自然仕込をやらせてもらえるとは思わなかった」とハーパーさん。そして、一番最初から勝負をかける事にGoサインを出した木下社長。2人で目指す方向性を決めて、進んできた事が良く分かりました。

 

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土壁で出来ている蔵の殆どの部分は100年以上前から使っている昔ながらの設備です。外気が15度近くあるのに、この蔵の室温は8度前後で冷っとしていました。酒造りに適した蔵だから約170年もの間、この蔵で酒を造る事が出来たのではないか、と仰っていました。

 

また、地下水ではなく、湧き水を使うとの説明をしてくれたので、気になったのが温度。聞いてみると、やはり水の温度は季節によって全然異なり、杜氏としては頭を悩ませるポイントらしいです。特に今シーズンは、3月の半ばなのに15度~20度近くまで気温が上がってますから、それに伴い水の温度にも変化があるそうです。特別な機械で温度調整が出来るタンクを持っている訳ではないので、常に水の温度には注意をしているそうです。

 

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テイスティング

 

「是非、酒も利いていってください」と暖かく声をかけて頂きました。社長さんや、杜氏の目の前でテイスティングをして、コメントをする時は、いつも緊張する一瞬でもあります。僕の場合は、海外市場を考えてコメントをするので、頭の中がグルグルする時もあります。特に重要なのは、Food paringについて考える事で、この酒はどんな食事の味を引き出すか?を直感的に感じるか。そして、味と香りを海外の人に伝える時の「例えば、OOOの様な香り」という、「例え」を引き出せるか、どうか、をコメント出来るようにしています。

 

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玉川の酒のぶれないIdentityとして、Cleanさを感じさせる味わいがあると思います。これは、どのラインナップにも共通していて、食事のUmamiを引き出す、食事というエンターテイメントの場を更に良くする酒という印象を受けます。

 

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シンガポールのインポーターも、かなり気に入っているTime Machineシリーズ。3年ほど熟成させたVintageものと1年ものの両方をテイスティングすると、熟成の違いをみる事が出来るので貴重な体験です。香りのインパクトと味のキャラクターが、オリジナルのStyleだなと感じる酒です。精米は88%、酸度もアミノ酸も一般的な吟醸酒の数倍高い不思議な酒です。クリーム系の食べ物に合わせると、味をEnhanceする酒なのは間違いなしですね。

 

 

余談ですが…

 

蔵へは、かなり味のある電車で向かいます。

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関東でよく目にする電車とは異なり、エンジンがついた電車。そして、乗る時は後ろのドアからで、下りる時は一番前からのドアで降ります。本数は1時間に1本くらい。

 

のどかな感じで100%癒される景色が広がります。

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この景色に見とれていたら、下りなければいけなかった駅を通り過ぎてしまいました!慌てて戻ろうとしても、次の電車は40分後…。事情を担当の梯さんにお伝えした所、5分後には車で迎えにきてくれました。蔵について、皆で大爆笑のインパクトを与えた、僕の記憶にも残る楽しい?蔵見学でした。梯さんには、感謝です!


投稿日: 作成者: Yoshi Nakano
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